ロンドンから現れたミステリアスな2人組が、昨年末の「BBC Sound of」のロングリストに選出されて以来、徐々にその名を広めてきている。わずか6歳の女の子がブレイクダンスを披露、ジャスティン・ティンバーレイクまでもが大絶賛した「Platoon」のビデオは、既に昨年末の段階で60万回を突破。続いて2月に発表されたシングル「Busy Earnin’」はBBC Radio1でのA List入りを含めがっちりエアプレイを獲得。万全の状態でデビューアルバムをリリースする。その彼らはトム・マクファーランド、ジョシュア・ロイド・ワトソンと名乗る二人から成るユニット、ジャングルだ。
Busy Earnin↓
今週遂にデビューアルバムをドロップ、フジロック・フェスティバルで来日も果たす。彼ら自身が世界中の音楽ファンのレーダーに気づかれないままいるのも時間の問題だろう。と、こんなことを書いていたのも一カ月位前なもので、ここ最近はグラストンベリーを含め数々のフェスに出演したりして、明らかにそのベールを脱ぎつつありますね。
シンセとツインボーカルをこなすTとJのバックでは、強力なリズム隊と、ゴスペル風のバックボーカルをこなす女性がサポートする。今夏のフェスサーキットでの活躍には目が離せない。彼らが「自分たちの音楽は、友情と、クリエイティヴなプロセスを楽しむことの基に成り立っている」というのには、自由な作風や演出によって作られた、作品そのものに集中してほしいという意思もあるのかもしれない。
数少ない情報を辿ってみれば、たまたま近所に住んでいた二人が、「ポケモンカード、どのカード持ってる?交換したいんだけど」というやり取りで出会ったのが始まりらしく、これをきっかけに仲を深めていったという。二人は、その後もローラーブレードをしたり、喧嘩をしたりと、ごく普通の少年時代を過ごしながら、お気に入りの音楽を持ち寄ったりし、
インターネットが今ほど発達する前の時代を成長してきたという。しかし、彼らの音楽の伝播方法といえば視覚を用いたごく現代的なものだ。SNSで話題となった「Platoon」のMVでは「B-Girl Terra」と名乗る6歳の少女のブレイクダンス、「The Heat」のMVでは、黒人の巧みなローラー・ブレイドプレイをフィーチャーし、音楽のみならず視覚をも使って注目を集めようとしてきた。そんな風に、彼ら自身よりも曲そのものと視覚に訴えかける方法は、もしかしたら彼らが本当の名前を隠しながらミステリアスに活動するのにはもってこいだったのかもしれない。
Platoonのヴィデオ↓
The Heatのヴィデオ↓
で、本題の「で、音楽はどうなの?」って?
発売となる彼らのアルバムは、70年代ファンクや、ヒップホップ、ソウルを影響源として伺える。引き合いに出されているのは、カーティス・メイフィールド、ビー・ジーズ、The xx、ボン・イヴェールに、シザー・シスターズのポップネス、P-Funk, MGMTのサイケさ、スヌープ・ドッグなどのヒップホップ、最も最近のでいえばディスクロージャーだ。(僕はポスト・ダブステップも加えたいと思う。特に「Lucky I Got What I Want」を聴くと感じる。)それから、何より、アルバム全体を覆うソウルフルかつ浮遊感を伴うグルーヴが聴く耳を飽きさせない。加えて、TV On The Radioに影響を受けたようなファルセット・ボーカルはファンキッシュな楽曲を引き立てるのに見事な役割を果たしている。
Lucky I Got What I Want↓
発売されたアルバムを聴けば、彼らの才能は十分にお分かりになるはず。この不思議な二人組、今夏を代表するアートポップアルバムを作ってくれました。是非手に取って、フジロックでのステージで踊ってみてはいかがでしょうか。