FKA Twigs(FKA = Formerly Known As)、この名前が今年の残りの期間、多くの人にとって話題の中心となっていくことは間違いないかもしれない。二つの絶賛されたEPとBBC Sound ofのリスト入りを経て、徐々にそのバズは世界的に大きなものに、今年になってからはファッション誌などでも話題となった。そして、遂にその新たな"イット・ガール"がアルバムをリリースした。驚くべきことにその彼女のデビューアルバム『LP1』がなんと、新人ながらも今年一番の高得点レビューを得ている。日本では既に先週リリースになっているが、今からでも遅くない!いま一度、シーンの新たな寵児、FKA Twigsのことを知ってみてはどうだろうか。
イングランドのグラスターシャ―出身の26歳のツイッグスは、スペインとジャマイカのハーフであり、そんなこともあってか独特の、少しエキゾチックなルックスを持つ。元々はダンサーとしてキャリアをスタートし、Jessie Jの
Price TagのMVで踊ったり、BBCのコメディショウでもダンサーを演じていたという。しかし、ロンドンに引っ越した時期を機に、彼女は「自分の情熱はダンスではなく音楽に向いているのでは?」と考えるようになっていく。2012年から音楽活動を積極的にしていくと、Bandcampで『EP1』をリリース。このEPからの楽曲「Hide」は刺激的なMVと共にインターネットの音楽ブロガーたちを中心に強くバズを得る。その後にThe xxやSBTRKTを擁するYoung Turksと昨年9月に契約すると、カニエの『Yeezus』に参加したことで注目されたトラックメーカーArcaをプロデューサーに迎えた『EP2』をリリース。これがまた各メディアから大絶賛を受け、その中からの「Water Me」は現在までにYouTubeで300万回以上の試聴回数を獲得した。この「Water Me」でも彼女のMVは独特の世界観を提示する。曲のリズムに合わせて左右に顔を揺らしながら徐々にトゥイグスが登場。その後は終始アップで歌いかけてくる。彼女のジュエリーやカーリーヘアをまとったその個性的な姿と共に、一度見ると忘れられないビデオだ。
「Hide」
「Water Me」
マッシブ・アタックからビョーク、シャーデーらと比較される彼女の音楽は、今のシーンの空気感を如実に表す、音数を減らしたミニマムなR&Bであり、トリップホップだ。ポストダブステップやThe XXなどの雰囲気を感じるミニマムなサウンドを基盤にしながら、彼女独自の唯一無二のサウンドを獲得している。また男女間の性愛を歌った詩にも、彼女の個性が表れており注目だ(例えばセックスが一つのテーマとなっている「Two Weeks」の歌詞も過激でリアル)。そんなところから彼女を紹介するときに「エロティシズム」や「エクスタシー」という言葉を並べられることも少なくない。また、最近ではメディアのみならず、ロードやアルーナ・ジョージ、そしてここ日本からはtofubeatsからもラブコールが止まない。
ライブの一コマ
ソールドアウトが相次いでいるライブでは、歌の素晴らしさはもちろんのこと、徹底した神秘性が発揮されているらしい。ルックスからMVまで彼女の自分自身の見せ方の上手さにも魅力があるに違いない。
「Two Weeks」
そんな彼女のデビューアルバム『LP1』は、前述の通り「2014年を代表する名盤になり得る」と言いたくなるほど絶賛を浴びている。8月12日現在では18媒体のレビューが出そろい、その平均は89点だ。この89点というのは、今年の最高点のであるSt. Vincentに並ぶ点数だ。彼女こそが年末に今年のシーンを振り返る時に、最も語られるアーティストの一人になることは間違いない。先日のロードの来日公演に夢中になっていた人なんかにもチェックしてほしい一枚だ。
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FKA Twigs 『LP1』
Hostess Entertainment / Young Truks
【Track List】
1. Preface
2. Lights On
3. Two Weeks
4. Hours
5. Pendulum
6. Video Girl
7. Numbers
8. Closer
9. Give Up
10. Kicks