The New Wave of GRIME 〜グライム/UKヒップホップで2015年起きたことと台頭する新世代のMCを知る (3)

  • 2015.12.02 Wednesday
  • 21:00
〜"NEW WAVE"がリアルであることを証明する2015年の10の出来事-〜

⇒(1)はこちら

 着々とチャートでも結果を残し始めたニュー・ウェーブ

いくら「カニエやドレイクが!」とか「他のジャンルとクロスオーバー」といっても、その「発展」に伴ってどのくらいリスナーが広まっているのかも肝心なところ。でも心配いりません。既に昨年、ボクサーなど別のキャリアを追求しながら長らく活動を休止していたMeridian Danのカムバック・シングル「German Whip」が13位に登場したのをはじめ、Lethal Bizzle「Rari Workout」が11位、 Skepta「That’s Not Me」が21位、など着々とグライムMCたちのチャートでの巻き返しが始まっていた。Meridian Danはグライム再燃の象徴的ヒット曲となった「German Whip」について、「俺は2006年辺りにボクサーになるためにMCするのをやめた。だからただ俺がMCから去ったそのころの音楽をやってるだけなんだ。コンシャスなんかじゃないし意図したわけじゃないさ。ただそれが俺の知ってるものってこと」と語るが、それが偶然にもグライムのルーツ的なスタイルを取り戻しているようにも思えるし、それはLethal BizzleやSkeptaのトラックにも当てはまる。これらのチャートでの好成績は、「EDMとクロスオーバーすることで生まれた特大ヒット」とはわけが違う。


そして、今年2015年。JMEのニュー・アルバム『Integrity』が11位、新人ラップ・ユニット、Krept & Konanのデビュー・アルバム『The Long Way Home』の2位、Bugazy Maloneの8曲入りEP『Walk With Me』の8位など、アルバムチャートでも続々と、しかも新鋭MCも含め顔を覗かせるようになった。ここまで示せばグライムが再びリスナーを取り戻していることはわかっていただけるであろう。



グライム・フリースタイルの歴史が動いた!Stormzy「Wickedskengman 4」がトップ20入り

グライムのチャートでの快進撃についてはこれを大きく取り上げないわけにはいかない。
 
フリースタイル、それはご存じのとおり「あらかじめリリックを用意せず即興でラップする」こと。しかし、フリースタイル作品はあくまでラジオで頻繁にかかることも少ないし、これまでフリースタイルによるヒット曲はあまり生まれてこなかった。
昨年から「Wickedskengman」シリーズと題したフリースタイルを発表してきたStormzyは、その第四弾「Wickedskengman 4」を彼にとってのもう一つの人気トラック「Shut Up」と合わせて初めてオフィシャル音源としてリリースした。すると、レーベル未契約のMCによるラジオでの強力なエアプレイなど得られていなかったこの曲が、全英シングル・チャートで初登場18位の成績を残したのだ。フリースタイルのシングルがトップ40に入ること自体2013年のJMEの「96 Fuckries」の一度のみだしそれもギリギリ40位だ。これは快挙以外の何物でもないし、StormzyのMCスキルがいかに支持を得ているかがわかるであろう。
  


このチャートでの結果を祝したパフォーマンスでマイクを渡されたファンの女性が「Shut Up」のラインを完璧にこなすこちらの動画も見てほしい

UKのブラック・ミュージックの祭典「MOBO Award」、今年はグライムMCが主役に

日本ではあまり知られていないかもしれないがUKには「MOBO Award」というブラック・ミュージック起源の音楽に特化したアワードがある。今年で20年目を迎えるこのアワードにも昨年からBest Grime Actの部門が登場するなど注目度が上がるようになってきた。今年はJMEの4部門SkeptaとStormzyの3部門など、実に全体の3分の一に及ぶノミニーを獲得したグライム・アーティストたちが賞レースをリードする形となった。


結果、Skeptaの「Shutdown」がベストトラックを、新人のStormzyBest Grime Act(2年連続)とBest Male Actの2部門を受賞、グライム界のゴッド・ファーザー、Wileyが今年初めて設けられた、アーバン/ブラック・ミュージックのパイオニアに贈られるPaving The Way Awardを受賞し、グライムが主役の賞となった。また4部門でノミネートされていた新人ヒップホップ・ユニット、Krept & Konanがベスト・アルバムなど2部門を受賞したのを含め「新世代」の活躍も目立った。



クレイグ・デイヴィッド、カムバック!Big Narstieらと共演

この秋、UK R&B界きってのスーパースターであり、ガラージや2ステップのトラックを数多くヒットチャートの上位へと送り込んだいわばこのシーンの「パイオニア」の一人でもあるクレイグ・デイヴィッドが5年ぶりにカムバックした。そのカムバック後最初の大きな露出の一つがこのBBC Radio 1XtraでのMistajamのショーへの出演だ。


そもそもこの番組はBBCの人気シットコム、『People Just Do Nothing』に登場する架空の海賊ラジオ局Kurupt FM(ガラージ、ドラムンベースが専門という設定)でお馴染みのGrindah、Beats、Decoy、Steveという面々がMistajamの番組を乗っ取るという企画。しかし、彼らのみで60分締めるわけにもいかず、番組中盤から徐々にゲストが登場することとなり、Big NarstieStormzyらMCに続いて、終盤の43分ごろに登場したのがクレイグ・デイヴィッドである(彼が登場した瞬間のBig Narstieのリアクションにも注目)。彼は自身のヒット曲「Fill Me In」をJack U with Justin Bieberの「Where Are U Now」のインストに合わせて披露する。クレイグは活動休止していた間、「Kurupt FM」にかなりの影響を受けていたとか。


しかも、この番組への出演をきっかけにBig Narstieとのコラボが実現、後に「When Bassline Drops」というタイトルの新曲としてリリースされたのだ。来る彼の新作には注目である。UKポップス界のスーパースターでもあるクレイグ・デイヴィッドがカムバックし、新世代グライムMC陣と共演し新曲で客演したというだけでも、いまのシーンのホットさを象徴していよう。


 中心地ロンドン以外からも多数登場する新世代MCたち

ここまで紹介してきたグライムの新しい動きも最初のうちはでも触れたような 「トラックメイカー」や「プロデューサー」の台頭が中心であった。しかし、既に何人か名前を出していることからもわかるように、昨年からは実力を持った「MC」の台頭が顕著である。その中でも特に強調したいのが、彼らがイングランド「各地」から名乗りを上げていることだ。

バーミンガム出身のMC、Safone

グライムというと、そのルーツをイースト・ロンドンの海賊ラジオ局とし、多くの人気MCがその地から登場してきたように、これまでこのジャンルの中心地はロンドンでありその事実は長らく変わることはなかった。しかし、この新世代のMCたちの出身地にはバーミンガム、マンチェスター、シェフィールドなどこの手のジャンルからは聞きなれない地名も多く目にする。ひとえにこれは初期の頃と違ってYouTubeやTwitterなどインターネットがよりグライムにとっての強固なインフラとなったこととが大きく関係しているかもしれない。これまでのグライムへのイメージを覆すようなこの動きも新時代を決定づけている重要な要素の一つに思えてならない。

 
次回は、その新時代のMCたちをいまグライムのみならずより広く盛り上がるブリティッシュ・ヒップホップのシーンと含めて紹介していこう。
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